中国には北方の遼寧省、鴨緑江の河口から、南方の広西チワン族自治区の北倫河の河口までを繋ぐ長い海岸線がある。それは1万8千キロメートルに渡り、一度も 途切れることなく続いている。30年程前から中国は日々大きな変化を目の当たりにしている。都市はまるで巨大な工事現場のようで、そこでは世界に追い付こ うと、行程が加速し続ける。このような傾向は、海岸地域において最も顕著である。膨大な数の人々が故郷を離れ、海岸地域に行く。都市化と経済成長が加速する一方で、人々の精神的な暮らしが停滞してゆく。

中国では毎年何百万もの人が故郷と遠く離れた場所に仕事を見つけている。春節(旧正月)の頃にはその何百万もの人がそれぞれの故郷にわずかの間だけ帰る。つ かの間の一族の集結である。人々は北から南へ、東から西へと、至る所から帰ってくる。彼らはこの過程で帰路を失う。本当に帰る場所はどこなのか、と。国の 様相が激変していくと同時に、多くの伝統的思想や生活習慣が崩壊していく。現在、中国人の伝統性は激しい衝撃に晒されている。「帰る場所を失う」ことは、 昨今の中国の症候なのかも知れない。

路上で写真を撮る私に、人々はしばしば尋ねてくる。「何をしているんだ?写真を撮るに値するものなんてあるのか?」と。それは私が自分自身に問いかけている ことでもある。「何故私はここに来たのか?」と。私はいつもこう答える。「ただ見るために来たのだ。辺りを見渡して...。」私は今日の中国をそのまま記 録したい——人々の現実とその風景をこのカメラで記録するために、そして、海に向かうために。

子どもの頃私は、海に憧れ、海の神秘性に魅せられ、近寄りがたいものと感じていた。私は未だに同じように感じている。私はここに、強い葛藤と豊潤なイメージ を探しにやってきた。そこには、深い哀しみや喪失感も含まれているだろう。海は生命と夢の始まりである。同時に、私は海に心の故郷を探している。

ー張曉

Artist Profile

張曉

張曉は1981年中国山東・烟台出身。 煙台大学でアート、デザイン、建築を勉強した後、重庆晨报(THE CHONGQING MORNING POST)の写真部に配属されました。 現在はフリーランスの写真家として四川省成都市をベースに活動しています。

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